日本と海外の就活事情

こんにちは、就活を間近に控えた、ドイツに留学中の大学生です。

先日、ドイツのあるホステルで、ドイツに来て転職活動をしている30代クロアチア人に出会いました。

ちょうど彼が転職活動中で、僕も就活を間近に控えていることもあって、数時間にわたり各々が抱える求職活動の不安について語り合いましたので、その時に感じたことを色々と書きたいと思います。

 

まず、そのクロアチア人の彼と就活の話をしている過程で感じたのが、就活に関する会話がよくよく噛み合わないということです。

例えばこういう会話がありました。クロアチア人の彼を仮にAとします。

僕「就職する企業選びってどうしたらいいのかな?」

A「君はどういう職種で働きたいの?マーケッター?ファイナンシャリスト?それとも証券アナリストとか?」

僕「そうだね、今のところベンチャーキャピタル(VC)とかいいなって思ってる。」

A「なるほどVCね。だったらこのサイトでVCの募集を探して、会社名と電話番号・メールアドレスをリストアップして、ひとつずつ連絡を取って今も募集をしているか聞いてみたらいいよ。もし、募集をしているようだったら次はCV(履歴書のようなもの)を送って、その次は面接だね。簡単でしょ?」

僕「??????え、あれ、ちょっと待って!」

A「え??何????」

と、まあこんな感じです。

なんで僕たちが混乱したかというと、一つは、日本の採用は新卒一括採用であり、海外の採用は年中採用であるということを、お互い知らない状態で、お互いの前提の上で話をしていたからです。

もう一つの理由は、彼が重点を置いていたのはその会社が「どういう会社なのか」とういうことではなく、「その会社でどういう仕事ができるのか」とだということです。

つまり、僕が就職先は例えば、金融業界または○○銀行などといった「業界」や「会社」で就職先を選ぶものだと考えていたのに対し、彼はマーケッターやファイナンシャリストなどの「職種」で選ぶものだと考えていたのです。

 

この後、お互いの採用事情を共有しながら、日本と欧米の就活の違いについて話を深めていきました。そしてその中で僕が、さらに決定的な違いだと思ったのは海外の採用が「即戦力採用」なのに対し、日本の採用が「潜在能力採用」だということです。

 

少し話が逸れますが、日本の大学生をやっていると、次のような話をよく聞きます。

「日本の就活はクソだ。アメリカみたいに能力で学生を判断しろ。」

「なんであいつは大学の成績は最悪なのに、内定をたくさんもらってるんだ?」

「大学の勉強をするよりも、世界一周した方がいい企業に就職できる。」

「結局は能力があるやつよりも、自己開示がうまいやつが勝つんじゃないの?」

などなど。

正直に言うと、僕もかつて少なからずそう思っていた大学生の一人です。

ただ、今にして思うとそういう考え方はナンセンス以外の何物でもないと思います。

なぜかというと、日本企業の採用活動は、日本の近代歴史と日本企業のあり方を反映したものだからです。

 

 

ご存じのとおり、日本企業は戦後の復興や、高度経済成長の下で「終身雇用制度」や「年功序列制度」などにより、日本経済の成長を支えてきました。これらの制度の存在により、人々は大企業に入ってその会社のために一生を捧げて働くことこそが、一番「安定」して理想の働き方だと信じてきました。

 

これらの制度の下日本の企業は、新卒一括採用で採用した人材を、長い年月をかけて自社で育て上げることで、自社で行う仕事を効率よくできる人材や経営人材を獲得するという手法を用いてきました。これらの戦略の下では、採用の際には経営人材になりうる「潜在能力」と、自社に長く居続けることができる「人間性」(企業文化との適合性)を複数の面接を通して見極めることを重視します。そのため日本の大学生は、就活に際し面接を通過するために「自己分析・企業分析」を就職活動の主な手段として行ってきました。

 

一方海外の企業はというと、経営人材も他の人材も自社で育てるのではなく、必要な時に引っ張ってくるという手段を取っています。そのため、海外の企業は採用の際には、一回か二回の面接に加え、CVや大学の成績を基にその人材の専門性や実用的なスキル、即戦力となりうるかを判断することを重要視しています。

欧米の学生はこの採用方法に合わせて、専門性や実用的なスキルを獲得できる大学に行き、そこで必死に勉強していい成績を取り、また長期のインターンシップに参加することで実務経験を積みます。

その背後にあるのは、欧米の人々にとって会社は、キャリアを形成するという過程で必要に応じて転職を繰り返しながら、渡り歩いていくものであるという価値観です。つまり企業にとって、研修などを行って人材を育てても、その人材はすぐに外の会社に移ってしまうので、なんのうまみもないのです。

 

このように、日本は日本に合った「潜在能力採用」を、欧米は欧米に合った「即戦力採用」とういうやり方で採用活動を行い、学生はそれに合わせた就活の方法を取ってきました。

 

しかし、この状況も昨今のグローバル化ベンチャー企業の台頭、さらにはシャープや東芝などといった大企業の経営の揺らぎを見ていると、どんどん変わっていくんだろなと思わされます。

 

大学生が好きなだけ遊べる時代も、そのうち終わってしまうかもしれませんね。

 

終わり

 

追記(2016/3/31)

日本の仕事と海外の仕事の違いを詳しく説明している記事を見つけたので、そちらのリンクを掲載しておきます。

globalbiz.hatenablog.com

 

おわり